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旅と地理のまとめ

アフリカ最大の国 アルジェリア

アルジェリア民主人民共和国は、アフリカ北西部に位置する国家で、チュニジアリビアニジェール、マリ、モーリタニア、モロッコ西サハラと国境を接しています。また、地中海に面しており、対岸にスペインやフランスがあります。

アフリカ最大の面積を誇る国で、南部には広大なサハラ砂漠が広がっており、人口の大半は海岸部に集中しています。

マグレブ*1諸国の一つであり、国民の大半がアラブ人で占められているイスラム教国です。

そんなアルジェリアがどんな国なのか、みていきましょう。

 

基本情報

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アルジェリアの位置

首都 アルジェ
人口 4385万人
言語
公用語アラビア語ベルベル語
フランス語も広く使用されている
民族
アラブ人(75%)
ベルベル人(25%)
宗教 イスラム教(スンナ派
GDP 1452億USドル(一人当たり 3,337ドル)
通貨 アルジェリアディナール

 

 

気候:アルジェリアの気候は大きく3つに分けられます。首都アルジェを含む人口の密集した沿岸部は地中海性気候(Csa)で、夏は暑すぎず冬は寒すぎず過ごしやすい気候です。

沿岸部とサハラ砂漠を隔てるアトラス山脈の走る地域はステップ気候(BSk)で、降水量は少なく気温の日較差が大きいです。

南部の内陸部の大半を占める地域はサハラ砂漠に覆われており、砂漠気候(BWh)に分類されます。

地理

日本の6.3倍もの面積を誇る国土の約9割サハラ砂漠にあたる砂漠地帯であり、アトラス山脈によって温暖な北部沿岸部と隔てられています。9割以上の人口が沿岸部に密集しており、国土の大半を占める砂漠地帯の人口は点在するオアシスに居住しておりごく僅かに過ぎません。

国内最高峰は、サハラ砂漠ないにあるタハト山。砂漠内に聳えているため、植生はほとんど見られません。

ユーラシアプレートとアフリカプレートの境界に位置しする地震発生国であり、過去に何度か巨大地震にも見舞われています。

降水量が少なく、砂漠化も進行しており水資源の確保は国内における大きな問題の一つです。初夏にはサハラ砂漠方面から乾燥した季節風シロッコが吹き付けてきます。

歴史

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アルジェリアの国旗

古代アルジェリアベルベル人の居住しており、7世紀にアラブ人がこの地に侵入し支配者となったことにより、ベルベル人イスラム教に改宗するなどアラブ世界に組み込まれました。

その後は、オスマン帝国フランスによる支配を受け、1962年に独立を果たします。独立に至るまでの道のりは平坦なものではなく、独立に難色を示すフランスとの間でアルジェリア戦争が勃発。約8年に及ぶこの戦争でアルジェリアは独立を果たしたものの、戦時中はテロの応酬・凄惨な拷問や処刑によって多くの血が流れました。

独立後

アルジェリア民主人民共和国として独立を果たした後も正常不安定な時代が続きます。政治腐敗や、その結果台頭したイスラム原理主義勢力との暗黒の10年と呼ばれる内戦によって国家非常事態宣言が発令され国内は混乱し、多くの犠牲者を出しました。

2011年にはアラブの春*2に触発され、反政府デモが発生、民主化を求める人々と治安部隊の衝突によって逮捕者も出ています。これによって、同年2月に国家非常事態宣言が19年ぶりに解除されました。

情勢

アルジェリアの治安は改善傾向にあるものの、依然として安全とは言えません。首都アルジェなど沿岸部の都市は比較的落ち着いていますが、国境付近はテロ組織が潜伏しており、外務省の危険レベルにおいてレベル4の退避勧告が出ています。(2022年4月現在)

2013年には日本人10人を含む外国人が襲撃を受け殺害されるという事件も発生しています。

経済

豊富な天然資源が眠っており、輸出品はほぼ石油天然ガスで占められています。アルジェリアは天然資源に大きく依存した経済構造をしている他、フランスなどへの出稼ぎ労働者からの送金も外貨獲得の大きな手段の一つです。

沿岸部では農業も行われており、耕地面積は国土の3.5%程度ですが人口の10%ほどが農業に従事しています。主要作物は小麦や柑橘類、ナツメヤシなど。

また、サハラ砂漠にはラクダやヤギなどを飼育するトゥアレグ族という遊牧民もおり、畜産や酪農も行われています。

文化

料理:アルジェリア料理は旧宗主国のフランス、地中海、北アフリカのそれぞれの料理の特徴が交わったバリエーションの豊かさが魅力です。アルジェリア料理の多くは野菜や穀物、ハーブ類が使用されており、肉類もよく食べられますが、イスラム教国であるため豚肉は使われていません。

クスクスは国内で最もポピュラーな料理と言っても過言ではなく、何世紀にもわたって食べられ続けています。肉や野菜を煮込んだシチューをかけて食べるのが一般的です。地域によって加えられる食材が異なり、様々な食べ方ができるため風味や食感も地域ごとに異なります。

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クスクス

他には、オリーブオイルの風味が感じられるアルジェリアのパン・ケスラ、数種類の野菜の中にひき肉を詰めて煮込んだドルマなどもメジャーなアルジェリア料理です。

文学:アルジェリアの文学は古代ローマ、フランス、アラブなど様々な文化に影響を受けています。著名な作家を数多く輩出し、中でもアルベール・カミュは小説、戯曲、エッセイにおいて多くの作品を創り、ノーベル文学賞を受賞しました。

 

スポーツ:サッカーが最もポピュラーなスポーツであり、アフリカ諸国の中でもトップクラスの実力を持つ国の一つです。他にはハンドボールも盛んで、多くの国際大会において実績を残しています。また、柔道の人気も高く、アフリカ大会の上位の常連で、オリンピックでメダリストとなった選手もいます。

 

音楽:アルジェリア・オラン発祥の音楽であるライは、1980年代に世界的に広まっていきました。アラビア語歌われていながら、西洋音楽の雰囲気を感じられ、エキゾチックなアラブの雰囲気と合わさった音楽です。

しかし、それ故イスラム原理主義とは相容れず、1994年には人気のライ歌手が暗殺される事件も起きています。

観光地

渡航基本情報

プラグタイプ C、F
電圧 230V、50Hz
道路 右側通行
チップ 不要
ビザ 必要

アルジェリアへの入国は、首都アルジェにあるウアリ・ブーメディアン空港や第二の都市オランにあるオラン・エス・セニア空港へ欧州や中東からの空路での入国が一般的。

観光地としてのアルジェリアは多様な景観と多くの遺跡が見所で、国内には7つの世界遺産があります。

 

アルジェ

アルジェリアの首都にして観光の玄関口でもある首都アルジェ。オスマン帝国時代に成立したこの都市は、歴史的な建造物が数多く残っています。

特に旧市街の一画であるカスバは、世界遺産に登録されている宮殿などの残っている区域で、迷路のように入り組んだ街並み。

 

オラン

ライ音楽発祥の地であるオランは、地中海に面したリゾート地のような街です。バーやカフェが点在し、マリンスポーツも楽しめる他のアルジェリアの都市とはちょっと違う魅力があります。

 

ガルダイア

世界遺産ムザブの谷を構成する街の一つで、サハラ砂漠にある岩石の散らばる高原地帯です。モスクのミナレットを中心としたピラミッド型の街で広大なサハラ砂漠の中の美しいオアシスとして知られています。

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ムザブの谷

 

ベニ・ハンマードの要塞

世界遺産に登録されている考古遺跡*3で、かつてこの一帯を支配したハンマード朝の首都でした。城壁やモスクなどのイスラムの歴史を象徴する歴史的建造物が数多く残っています。

国際関係

基本的には非同盟中立でアラブ連帯の立場にありますが、広く多方面に外交関係を築いており、アフリカ連合AUアラブ連盟などの国際組織に加盟。

ロッコとは、アルジェリア西サハラの独立を強く支援していることなどから険悪な関係性となっており、2021年8月にこの二国は国交断絶を宣言しています。

東側のマグレブ諸国であるチュニジアリビアとは文化的に近しいこともあり関係性は非常に良好です。

旧宗主国であるフランスから様々な影響を受けており、独立した今でもつながりは深いものの、外交的な衝突がしばしばみられます。2021年には、アルジェリアフランス軍機の領空内の飛行を禁止するといった出来事も発生しており、二国間関係は安定していません。

まとめ

アルジェリアは、まだまだ国情の安定に時間がかかるでしょう。しかし、豊かで多様な文化を持ち、資源にも恵まれたこの国のポテンシャルは非常に高いと思います。

広大な砂漠とそこに生きる人々、美味しい料理、独自の音楽とアルジェリアが魅力的な国であることは間違いありません。これからアルジェリアがどのように発展していくのか楽しみですね。

*1:北西アフリカのアラブ諸国アルジェリア、モロッコチュニジアリビアモーリタニア)また、アラビア語で日の沈む場所という意味

*2:アラブ世界で起きた大規模な反政府デモ。エジプトなどいくつかの国では政権が打倒された。

*3:考古学において研究対象となる遺跡