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旅と地理のまとめ

カリブの海賊とタックスヘイブン バハマ

バハマ国は、イギリス連邦に加盟するカリブ海の島国です。

フロリダ半島の東部、キューバの北部に位置しており、国土は700以上の島で構成されています。

観光地として人気の国で、美しいカリブの海が広がる、欧米人観光客がたくさん訪れるリゾート地です。

タックスヘイブンとして知られており、2016年にはバハマ文書*1によってバハマ国内のペーパーカンパニーが公開され注目を浴びました。

また、その歴史を語るにおいて、カリブの海賊の存在を無視することはできません。

金融と観光の島国であるバハマについて、詳しく見ていきましょう。

 

基本情報

首都 ナッソー
人口 39.3万人
言語 英語
民族 アフリカ系 90%
宗教 キリスト教
GDP 112.5億USドル(一人当たり 28,579USドル)
通貨 バハマドル

 

気候

バハマは気候区分上サバナ気候(Aw)や熱帯モンスーン気候(Am)にあたり、メキシコ湾流の影響もあって年間を通して温暖な気候です。

雨季と乾季があり、11月から4月が乾季、5月から10月が雨季にあたります。また、雨季にはハリケーンが襲来し、年間降水量の7割が雨季に発生。

乾季にあたる月は比較的涼しく、降水量も少なく過ごしやすいため観光のベストシーズンです。

雨季は曇りの日が多く湿度が高いものの、北東からの貿易風が吹くため比較的過ごしやすいです。

地理

バハマは661の島と2387の岩礁からなり、そのうち有人島は29島のみ。

首都ナッソーのあるニュープロビデンスは、国内最大の面積のアンドロス島10分の1以下の大きさしかないものの、人口の7割以上がこの島に集中しています。

国土は非常に平坦で、最大標高はキャット島にあるアルバニア山の63m。国土の大半は海面から数m程の標高しかありません。

地理的にはカリブ海に属すものの、その島々は大西洋上にあります。国土は東西に800km以上に渡って広がり、フロリダ半島と最も近い地点でその距離は約80kmです。

バハマ諸島は、サンゴ礁とそこから作られる石灰岩で形成されているため、国内に河川はありません

世界のサンゴ礁約5%バハマ海域にあり、世界で三番目に大きいバリアリーフを形成しています。

島々の特徴

バハマを構成する島々は、珍しい景観を見られる場所も多く、例えば、二番目に大きいエルーセラ島では、ピンク色の砂浜のピンクビーチが見られます。

ピンク色の貝殻が砕けて砂と混じり合ったことで、このような一面にピンク色の砂浜が作られました。

最大の面積を誇るアンドロス島は、マングローブが広がるの湿地帯を形成。

グランド・バハマは、第二の人口を誇る島で、住宅や道路網、運河などの開発が進められ国内第二の都市として開発が進行中です。

イナグア島は、多数のフラミンゴが生息しており、生息地は国立公園に指定されラムサール条約に指定。

歴史

先史時代〜

西暦300年ごろ、現在のキューバから渡ってきた人々が定住し、漁業などをしながら暮らしていました。

西暦900年ごろになると、ルカヤン族がこの地に定住。政治、宗教などの社会システムを構築し、発展していきました。

1492年、クリストファー・コロンブスサンサルバドル島に上陸。この地を奴隷の供給源として、ルカヤン人を他の島々に連れ去ります。

その結果、4万人ほどいたルカヤン人は病気や過酷な労働などによってたった25年で全滅してしまいました。

イギリス人の入植

17世紀、イギリスのピューリタン*2たちが宗教的な自由を求めて移住。

しかし、食糧難に見舞われたため、彼らを率いていたウィリアム・セイルアメリカへ向けて出向、マサチューセッツ湾岸の植民地に到着し物資を受け取ります。

この時アメリカ側が得た収益は後にハーバード大学となる土地の購入に充てられました。

海賊たちの時代

17世紀後半ごろから、バハマ諸島周辺で多くの私掠船*3や海賊が見られるようになります。

浅い海域に無数の島があるため、財宝の隠し場所として最適なこと、海上交通の要所であるため商船が多く、略奪の機会に恵まれていたことが大きな理由です。

黒髭の異名で知られるエドワード・ティーバハマを海賊活動の拠点としていました。

ナッソーは海賊が集まることで、彼ら独自の海賊の掟が誕生。無政府状態になったことも相まって、1706年から11年間海賊たちが自治する私掠船共和国と呼ばれる状態となります。

1718年ウッド・ロジャースバハマの総督に任命されるまで、海賊たちの栄華は続きました。

ロジャースは降伏した海賊に恩赦を与えると宣言、多くの海賊が降伏、抵抗したものも処刑されるか逃亡したため、バハマにおける海賊の時代は終わりを迎えます。

奴隷の輸入〜独立

18世紀後半、アメリカ独立戦争におけるロイヤリスト*4たちが入植、アフリカ人奴隷を輸入し、プランテーションの労働力としました。

19世紀になって奴隷解放が行われた後もバハマに住み続け、現代のバハマ人は彼らの末裔です。

南北戦争時は、連合国側の貿易拠点として繁栄するものの、戦争終了と共に再び衰退。

1950年ごろからは観光業と金融業で徐々に発展、1973年にイギリスから独立を果たしました。

情勢

バハマの治安は比較的安定しています。しかし、観光大国であるため渡航者が多く、彼らを狙った軽犯罪は少なくありません。

重大犯罪は少ないですが、防犯対策を怠らず犯罪に巻き込まれないように対策をしておくべきでしょう。

経済

バハマカリブ諸国一裕福な国家で、その財源は主にタックスヘイブンによる金融業によってもたらされています。

一人当たりの名目GDP先進諸国と並びうるほどであり、外国企業の誘致や観光客などからの外貨収入が主な収入源です。

バハマに限らず、ケイマン諸島などカリブ海島嶼部は観光業以外の産業の発展が見込めないため、税率を抑え、企業を誘致してきました。

その結果、多くの企業が投資、参入し、国内経済は潤ったものの、大企業や富裕層の税逃れに利用されており、2016年のパナマ文書*5の漏洩は世界的なニュースになりましたね。

これは違法ではないものの、国家にとっては税収が減り、犯罪組織の資金洗浄に使われる危険性も孕んでいます。

主要貿易相手国はアメリカやEU諸国で、工業製品等を輸出し、燃料や鉱物を輸入。バハマドルは、1USドル=1バハマドルの固定相場制を採用。

観光業もバハマ経済の屋台骨であり、地理的に近いことや公用語が英語であることからアメリカからの観光客がその大半を占めています。

GDPの半分以上を観光業に依存し、観光客の大半がアメリカから来ることからアメリカの情勢に依存傾向にあるのがバハマ経済の特徴。

ビーチリゾートやマリンスポーツだけでなく、カジノなどの娯楽施設も充実させ、観光客の誘致に力を入れています。

文化

バハマの国名は、スペイン語干潮を意味するバハ・マール(Baja Mar)に由来。カリブ語で浅い環礁を意味するという説もあります。

島ごとに言語や生活習慣、文化などに多少の違いがあり、例えば、人口の過半数が白人で占められる島や、アフリカの文化が色濃く島などなど。

言語

バハマ公用語は英語ですが、アフリカの言語とイギリス英語が混ざったいわばバハマ方言言える英語。

これはイギリスによる植民地支配と、アフリカから人々が奴隷として連れてこられた歴史に由来するものです。

また、ハイチからの移民はクレオール言語を使用。バハマ方言もバハマクレオール語と言われることがあります。

料理

バハマ料理は、西アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、先住民などさまざまな文化が融合して形成された料理です。

カリブ海で採れる新鮮なシーフードはもちろんのこと、果物や野菜もよく使用されます。

特にバハマ近海で採れるコンク貝は、バハマの名物と言えるシーフードで、いろんな料理に使用される定番の食材。

例えば、コンク貝サラダバハマの定番料理の一つ。さいの目切りにした巻き貝を野菜や果物と共に盛り付けたサラダです。

ホットソースをかけたり、パイナップルやマンゴーなどの果物を加えたりと食べ方は人によってさまざま。

他にもフリッターとして揚げたり、魚介類のマリネであるセビチェの材料にしたりとレパートリーが非常に豊富。

その他の人気料理としては、グアバなどの果物を甘いソースでトッピングしたダフ、スープなどの添え物として出される甘いパンのジョニーケーキなど。

音楽

バハマでは、カリブ地域や国内発祥の音楽が人気。トリニダード・トバゴ発祥のカリプソや、アフリカ奴隷の子孫が生み出したジャンカヌーなどがその代表例。

その他の国内の伝統的な音楽として、アコーディオンなどの楽器を使うキャット島発祥のレークン・ストラップも人気です。

スポーツ

バハマで最も人気のスポーツはバスケットボール。ワールドカップへの出場歴はありませんが、NBAプレイヤーを複数輩出。

セーリングバハマ国技であり、人気も非常に高いスポーツです。多くの島でセーリングの大会やイベントが催されています。

観光地

基本観光情報

プラグタイプ A
電圧 120V 60Hz
道路 左側通行
チップ 必要
ビザ 3ヶ月以内の滞在は不要

バハマクルーズ船の寄港地として、多くの会社のクルーズ船が立ち寄ります。

飛行機で訪れる場合、ニュープロビデンス島にあるリンデン・ピントリング空港が空の玄関口。

基本はアメリカ経由となりますが、カナダやイギリスからの直行便も存在します。

主な観光地はもちろん、カリブ海の美しい海を楽しむビーチやマリンスポーツです。

キャスタウェイ・ケイ

キャスタウェイ・ケイはディズニーグループが所有するリゾートアイランドで、ディズニークルーズに参加しないと訪れることができません。

アメリカの、主にマイアミ発のクルーズラインの寄港地の一つで、その旅程の途中で訪問する島です。

ディズニーとビーチリゾートが融合した島で、さまざまなマリンアクティビティを楽しんだり、お馴染みのディズニーキャラクターにも会えます。

ナッソー

首都ナッソーはカリブ海クルーズにおける最も人気の寄港地の一つ。飛行機でバハマを訪れる際も大抵はここにに降り立つので、ほとんどの観光客が一度は訪れるでしょう。

ビーチリゾートを楽しむだけでなく、かつての海賊の様子を知れるパイレーツオブナッソーや、対海賊用のシャーロット砦などバハマの歴史も知れる施設が多いです。

フェリーで30分ほどのブルーラグーンは島全体がリゾートとなっており、イルカなどの海洋生物と触れ合うことも可能。

巨大レジャー施設であるアトランティスパラダイス・アイランドではプールやビーチ、水族館など広大な敷地内にさまざまな施設が完備されています。

エグズーマ

エグズーマ諸島の特徴はなんと言っても海を泳ぐ豚の姿を見られること。ここの豚たちは、ビッグ・メジャー・ケイに住み着いている野生の豚。

豚たちがここに住み着いている理由は、食用の豚が輸送中に船から逃げ出してここに住み着いたと言われています。

この島はナッソーからツアーで訪れることが可能。透明度の高い海で、スノーケリングやダイビングも楽しめます。

国際関係

バハマは小国でありながら、さまざまな国際機関に加盟し、世界や地域の発展や安定に寄与しています。

その結果、バハマは国際的に比較的高い地位にあり、国際的に重要な国家の一つです。

バハマの加盟する主な国際機関

国際連合

・カリブ共同体(CARICOM)

米州機構OAS

カリブ海初銀行(CDB)

各国との関係

キューバとはかつて漁業権を巡って争っており、険悪な関係にありました。

そんな中、1980年にキューバの軍用機がバハマの巡回船を沈める事件があり、バハマはこの件について、キューバ側に謝罪と賠償を求めます。

この時、キューバ側が非を認め謝罪と賠償を行ったため、それ以降二国間の関係性は改善されました。

ハイチからは、不法入国者が後を絶たず大きな問題となっています。しかし、両国の関係性は良好で、外交的にも経済的にも結びつきが強いです。

最も関係性が深いのがアメリカとイギリスの2カ国。特にイギリスとは、かつてバハマはイギリスの植民地で現在でもイギリス連邦の加盟国です。

アメリカにとって、バハマはハワイと並ぶアメリカ人にとっての一大リゾート地。

バハマへの観光客の8割ほどがアメリカ人であることからも、その人気ぶりが伺えます。

バハマにはアメリカに関連する会社も非常に多く、バハマの経済状況はアメリカに左右されると言っても過言ではありません。

まとめ

バハマは「カリブの海賊」の拠点となった歴史を持ち、アフリカから奴隷として連れてこられた人々の末裔が住む国です。

今では観光地として、金融の中心地としてカリブ海随一の裕福な国へと発展しました。

そんな今でも、島ごとに異なる文化や習慣の中にかつての歴史の名残を見ることができます。

観光地としての魅力も十分なバハマ。訪れたら海賊の隠し財宝を見つけられるかもしれませんね。

*1:バハマ国内のペーパーカンパニーなどについてまとめられたファイル

*2:イングランド国教会に反発し、改革を訴えたプロテスタントグループ

*3:戦争相手国の船を襲撃、略奪許可を得た個人の船

*4:アメリカ独立戦争時、イギリスを支持したアメリカの住人

*5:租税回避行為に関する機密文書