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旅と地理のまとめ

山の中のミニ国家 アンドラ

アンドラ公国はスペインとフランスの間、ピレネー山脈に位置するミニ国家*1です。現在世界に3カ国のみ存在する公国*2の一つで、金沢市とほぼ同程度の国土面積しかありません。

小さな国ですが、先史時代より定住者がおり、長い歴史を誇っています。特殊な体制を敷いている国で、かつてはタックスヘイブンに該当する地域でした。

人口の何倍もの観光客の訪れる観光立国であり、安全で小さな国土に魅力がたっぷり詰まっています。そんなアンドラがどんな国か見ていきましょう。

 

基本情報

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アンドラの位置

首都 アンドラ・ラ・べリャ
人口 7.9万人
言語
民族
アンドラ人(約50%)スペイン人(約25%)
ポルトガル人(約12%)
宗教 キリスト教カトリック
GDP 30.59億USドル(一人当たり 38,465ドル)
通貨 ユーロ

 

 

気候:穏やかで年間を通して降水量が一定の西岸海洋性気候(Cfb)に分類されます。ただし、山がちな地形であるため、標高の高い地域では冬に降雪量が多く夏場は比較的冷涼です。首都のアンドラ・ラ・べリャも標高1000m地点の山中にあるため、夏場でも肌寒いです。

地理

アンドラはスペインとフランスに囲まれた内陸国で、国土全体が山岳地帯となっています。2000m峰が無数に点在し、最高峰のコマ・ペドローザは2946m、最低地点の標高は840mです。

国境線はスペインとの間で64km、フランスとの間で57km接しています。国土面積はヨーロッパで六番目に小さく、同時にヨーロッパ内のミニ国家の中では最大です。

山がちな地形故、冬はスキーリゾートとして人気が高く、また、国内には172もの湖があり、7つの河川が流れています。

ピレネー山脈

ピレネー山脈イベリア半島を地中海から大西洋にかけて約430km走る山脈です。スペインとフランスの国境線上にあり、山脈内にアンドラが位置しています。

地質はアルプス山脈より古く、主に花崗岩石灰岩で構成されている褶曲山脈*3です。また、アルプス・ヒマラヤ造山帯の一部でもあります。

歴史

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アンドラ国旗

アンドラ紀元前より定住があったとされており、現在のアンドラ公国の起源は9世紀初頭にスペイン辺境伯の一人、ウルヘル伯自治領となったところが始まりです。

その後、ウルヘル司教に宗主権が譲渡され、一部統治権を得ていたフォワ伯との間で争いが生じます。この争いは1278年、両者が共同統治する宗主契約を結んだことで終結しました。

16世紀後半にフォワ伯側の統治権がフランス国王に譲渡されアンドラ公国となり、フランスが共和国となったことで、統治権はフランス大統領へと継承されています。

1993年に憲法が制定され、国民投票で可決されたことで正式に独立国家となりました。

情勢 

治安は非常に良好で、国の規模が小さいこともあり凶悪犯罪はほぼ発生していません。夜間にも問題なく出歩くことが可能で、日本と同程度に最低限の防犯対策をしていれば十分です。

政情も安定しており周辺国との関係も良好、強いて危険な面を挙げるとするならば、山がちな地形故雪崩地滑りが発生する可能性があることくらいでしょう。

政治

アンドラは独立した主権国家ですが、国家元首はスペインのウルヘル司教とフランス大統領の二人で、国家成立時から続く共同君主制を今でも採用しています。

敵対する国家が存在しないため、国防をスペインとフランスに委任しており、自国の軍隊を持っていません。

経済

財政収入の大半をEUからの輸入関税に頼っており、主要産業は観光業です。地形を生かしたトレッキングやスキーなどのアウトドアスポーツが楽しめる場所が豊富で、特にスキーリゾートしての人気が高く、冬場は多くの人で賑わいます。

また、タバコやブランド品などが周辺国と比較して安く、免税店も数多く軒を連ねているためスペインやフランスからの買い物客も非常に多いです。

かつてはタックスヘイブンとしてマネーロンダリングや資金隠しに利用されており、タックスヘイブンの監視対象であるグレーリストに登録されていました。この状況を改善するため、2012年より非居住者に対する直接税の課税が徐々に導入されていき、2018年にグレーリストから削除されています。

文化

アンドラはフランス、スペイン、ポルトガルの文化が混じり合ったカタルーニャ文化を形成している地であり、唯一カタルーニャ語が国家の公用語となっている国です。

 

スポーツ:スキーやトレッキング、マウンテンバイクなど山に囲まれた国土を生かしたスポーツが盛んです。また、サッカーも人気があり、プロサッカーチームによる国内リーグも存在します。

 

教育:アンドラ人は子供の教育に使用する言語をカタルーニャ語スペイン語、フランス語の中から自由に選択できます。選択した言語を使用する学校に通わせることになりますが、最も選ばれている言語は公用語であるカタルーニャ語ではなく、フランス語です。

そして、国民の多くが上記の三言語を全て話せるトライリンガルであり、加えて英語を話せる人も少なくありません。

 

料理:アンドラ料理はカタルーニャ料理であり、スペインやフランスの影響を受けているため、似ている点が多いです。

代表的な料理は、パスタや野菜、肉類の入った国民食とも言われる煮込み料理のエスクデジャ(Escudella)、カタツムリにオリーブオイルやマヨネーズを加えてオーブンで焼いたカルゴルズ(Cargols)、淡水魚をハムで包んで焼いたトルチャアラアンドラナ(Trucha a la Andorrana)など。

観光地 

渡航基本情報

プラグタイプ C、F
電圧 230V、50Hz
道路 右側通行
チップ 必要
ビザ 90日以内の滞在は不要

 

国内には空港も鉄道駅もないため、アンドラへの渡航はフランスかスペインから長距離バス等を利用して陸路で行くことになります。

アンドラの観光地としての魅力は、周辺国と比べて安くショッピングができることと、地形を生かしたアウトドアスポーツやレジャー施設です。

アンドラ・ラ・べリャ

首都のアンドラ・ラ・べリャは人口22,000人ほどの小さな都市で、市内の名所は徒歩で回ることも可能。地元の工芸品からブランド品まで多くの土産物店があり、ショッピングを心ゆくまで楽しめます。

巨大なリラクゼーション施設であるカルデアは、プールやジャグジーなどの娯楽施設を完備しており、一日ゆっくりと疲れを癒せる施設です。

ホテルやレストランも充実しており、街中の教会や広場を散策するだけでも楽しめるのではないでしょうか。

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アンドラ・ラ・べリャ

マドリウ・ペラフィタ・クラロ渓谷

アンドラ唯一の世界遺産で、国土の10%、42㎢の広さを誇る渓谷です。氷河、森林、岩山など豊かな自然に囲まれた場所で、野生動物の保護区でもあります。

人里離れた場所にある絶景を拝めるハイキングスポットで、アクセスは公共交通機関を使うより、レンタカーを利用するかツアーに参加するのが良いでしょう。

 

グランドバリラ

アンドラにはいくつものスキーリゾートがあり、その中でもグランドバリラは国内最大級のスキーリゾートの一つ。スキーワールドカップの予選会場にもなったこともあり、数多くのコースを抱える屈指のスキーリゾートです。

国際関係

1993年に国家として正式に独立し、国連にも加盟しました。国内ではユーロが法定通貨として使用されているものの、EUには加盟していません。

アンドラは現在、146カ国と外交関係を結んでおり、日本は1995年に外交関係を築きました。

隣国のスペイン、フランスとは経済面でのつながりも強く、この2カ国が最大貿易相手国です。

アンドラは5カ国の大使館と4カ国の領事館があり、自国は6カ国に大使館、1カ国に領事館を構えています。

大使館

アルメニア(所在地はオーストリア・ウィーン)

・フランス

・イタリア(所在地はスペイン・バルセロナ

ポルトガル

・スペイン

領事館

・ベルギー

サンマリノ

・フランス

・スイス

在外公館

オーストリア

・フランス

・スペイン

ポルトガル

・ベルギー

アメリカ(領事館)

ちなみに、在アンドラ日本国大使館は在フランス日本国大使館が兼任しています。

まとめ

アンドラは山の中にある小国で、日本から気軽に訪れるのは少し難しいかもしれません。しかし、アウトドアやショッピングにぴったりの国で、訪れたら楽しめる国であることに間違い無いと思います。

行く価値は十分にあるので、スペインやフランスを訪れた際に寄ってみてはいかがでしょうか。

*1:規模の小さい主権国家

*2:アンドラモナコリヒテンシュタインルクセンブルク大公国

*3:大きな力がかかったことで変形(褶曲)した地層の広がる山脈